ゴリラ

※注)(邦題)は、MSI発売(レコード番号MSIF2192)の表記に準じています。
とってもスゴイ奴だったに違いないコングに捧げる

発売日: 1967 10
LP / UK: Liberty LBL83056(mono) LBS83056(stereo), US: Imperial LP-12370
再発盤については下記参照
CD / UK: Cornology (The Intro), Four Bonzo Dog Originals, BGO CD82
US (CA): One Way S21-17370, JP: MSI MSIF2192

Side 1

Side 2

COOL BRITANNIA (Trad. Stanshall/Innes)
(クール・ブリタニア)
変体趣味の大放出だって?
読者のご意見は?

THE EQUESTRIAN STATUE (Innes)
(馬上の勇姿像)
サルトルの『嘔吐』に刺激されて出来た作品

JOLLITY FARM (Les Sarony)
(ジョリティ・ファーム)
子豚ちゃんはみんなブーブー、キュー、ブーブー、キュー

I LEFT MY HEART IN SAN FRANCISCO (Doug Cross)
(アイ・レフト・マイ・ハート・イン・サン・フランシスコ)

LOOK OUT, THERE'S A MONSTER COMING (Stanshall)
(気をつけろ、バケモノが来るぞ)
ロボットの新時代を告げる。
形成プラスちっく的な画像的映画。ヒューマノイド万歳。

JAZZ, DELICIOUS HOT, DISGUSTING COLD
(Stanshall, Innes, Ash, Nowell, Spear, Slater, Smith)

(ジャズ、デリシャス・ホット、ディスガスティング・コールド)
「…昔はね、そりゃアル・カポネのために演奏したこともあるよ…まぁな
…。 ぇーと…彼の弟が実はケツにねじ込む奴でさ(彼が)撃ったのかって?
銃撃戦がどうかしたのかよ?ワシはただ吹いてただけなんだっつの。 ウィリィ・ウィンドバテルの「ノーマル・バンド」とイリノイじゅう回って。 ルディーを憶えてる?シカゴの「ジョック・ストラップ」( ※注) 2.運動用サポーター)と彼のバンド「リッポ」、メンミの「ビザンティン・シックス」。 そのころからもう、ワシは最高だった。ただ吹きまくって、楽しんで、もう最高、楽しくてなぁ、ただ吹きに吹いて、吹きまくって…。」

DEATH-CAB FOR CUTIE (Stanshall/Innes)
(かわいこちゃんへ死の車を)
主要登場スターは神。

NARCISSUS (Ethelbert Nevin OP. 13., No. 4.)
(ナルシス)
読点をひとつ打ってみた。

著作権 1,5,6,9,12&13 S.Bron Music Co. Ltd.
THE INTRO AND THE OUTRO (Stanshall)
(ジ・イントロ・アンド・ジ・アウトロ)
私たちが紹介を受ける曲。
ロジャーがおヘソの中にジャズを発見する、ってぐらいにしとこうか。

MICKEY'S SON AND DAUGHTER (Lisbonna and Connor)
(ミッキー・マウスの息子と娘)
裸のかまど。電撃的ほほえみ。この曲ではいつも、何かするようにリクエストがかかる。

BIG SHOT (Stanshall)
(ビッグ・ショット)
究極の成人向けコミックス。
安っぽい神話的世界が帰ってきた。アメリカのペーパーバック本。学位論文もの。

MUSIC FOR THE HEAD BALLET (Innes)
(ドタマ・バレーのための音楽)
「…頭を脚のあいだに勢い良く振り込んで、バランスを取るー、リラックス、はいもう一回、深〜く息を吸ってぇー、次…退場。」

PIGGY BANK LOVE (Innes)
(ピギー・バンク・ラブ)
去勢ぎみのオーケストラものというか。ティ−ン向けのロック・チューン。たまにはお下劣なものを聴くのも気分転換になる

I'M BORED (Stanshall)
(退屈したぞ)
だから何だよ? 腹に重い食事。果物と野菜。ポリッジのなかの詩。

THE SOUNDS OF MUSIC (Roger and Hammerstein)
(ザ・サウンド・オブ・ミュージック)
エセックス州ダーゲンハムのノーラ・ミッチェル夫人は、わずか2分35秒間でブラジャーを緩衝ヘルメットにすることができるって知ってた? 437回も見たんだから、532回も見たんだ、見たんだってば、見…。

著作権 2,7,11&14 Mann Music publishers Ltd.
3 Lawrence Wright Music Ltd. 4&10 Dash Music Co. Ltd.
8
著作権なし 15 Williamson

ダダは普通なことで、普通って素敵。

プロデューサー:ジェリー・ブロン
プロデューサー補:リン・バークベック
ジャケット・デザインとコメント:ヴィヴィアン・スタンシャル
プロダクション:イアン・ブッチャー

ライナーノート

ハーヴィー・J・サタン教授(Prof. Harvey J. Satan)
(追加情報の提供者は、ボニー女史、ローリー夫人、デイブ・クレイグ閣下、英国動物愛護協会)

さて 多くのバンドが、音楽界でアルバム数を重ねながら変化してゆくものだが、ボンゾズは歴史の中間からスタートを切ったように思える。 『ゴリラ』の制作中に、音楽的スタイル、容姿、バンドの構成メンバーまでもが現に変化をとげようとしていたのだ!

まず 時計を何ページか前に戻して…。 「ボンゾ・ドッグ・ダダ・バンド」は1966年頃、イギリスのパブで演奏して悪名を高めた。 この時点では全員大学を出たばかりで、演奏はほとんどが伝統的なジャズとヴォードビル舞台的な道化ナンバーだった。 この時期、彼らは2枚のシングルを発売した。 『My Brother Makes the Noises For The Talkies/ I'm Going To Bring A Watermelon To My Girl Tonight』と『Alley Oop/Button Up Your Overcoat』だ。 両シングルとも彼らをちっとも有名にはしなかった…が、何組かの真似っこや同類のアーチストが存在した。 「アルバーツ」や「テンペランス・セブン」といったところが、レコード会社の幹部連中の目に止まることとなった。 で、1967年にスタジオ・ミュージシャンを集めてレコーディングされたのが「ニュー・ボードビル・バンド」の『ウィンチェスターの鐘』だった。 この曲はすぐにヒットチャートを駆けのぼった…実際には「バンド」が存在しなかったにもかかわらず、だ。 ボンゾズは「ニュー・ボードビル・バンド」にならないかと誘われるというチャンスを得たが、きっぱりと拒否した…。 しかしボブ・カーだけは乗り気で、餌に食らいつき、ボンゾズからアイディアをいくつか掻っさらっていった。 (このためカーは ヴィヴィアン・スタンシャルレッグス・ラリー・スミスから極度に嫌われることとなった。) 嬉しくないニュースは:ボンゾがこのせいでニュー・ボードビル・バンドと間違えられるようになったこと…。 嬉しいニュースは:彼らがこのせいで伝統的なジャズだけでなく、 ロックにも立ち向かうようになったこと…ふたつを融けあわせて、創り上げたのが…(雷鳴のサウンド・エフェクト) 『ゴリラ』だ!!!

 その 結成当初からアルバムまでの道のりで(アルバム制作中でさえも)… バンドは不要物の投棄、追放、単純に言えばメンバーが何人か減っただけでなく…バンド名も変更になった! 「ボンゾ・ドッグ・ダダ・バンド」としてスタートしたが…すぐに「ボンゾ・ドッグ・ドゥーダー・バンド」に変わった。 (メンバーが一般大衆に「ダダ-イズム」とは何かを説明するのにうんざりしたため。) 本アルバムが、「ドゥーダー」という名称を冠した唯一のレコードで… このアルバム以降は、過去も、現在も、そしてこれからもずっと、 「ボンゾ・ドッグ・バンド」になるのだ!(天上から光がスッと射し込む)

 そして これでもまだ足りないと言わんばかりに、 BBCが ※注)原文ではBBCとなっていますが、 このページとかを見てみると、この1967-1969のテレビシリーズは、違うテレビ局、Associated-Rediffusion Television、そして1968年に引き継いだThames Televisionの制作だったかもしれません。 パイソニアンの皆様、情報をお寄せください。お待ちしております。(訳者のメール)  バンドのオリジナリティーに注目し、子供のテレビ番組『Do Not Adjust Your Set』の音楽エンターテインメントを担当する仕事を依頼した。 このショーは、ちょっとばかし大人向けにも作られていて、ボンゾズは彼らの音楽を「ライブ」で演じるチャンスを与えられ、 いくつかのスケッチの登場場面さえあった。 ショーは2シーズン続き、ボンゾズだけでなく、将来のモンティ・パイソンのメンバーにとっても足掛りとなった。 エリック・アイドル、テリー・ジョーンズ、マイケル・ペイリン、テリー・ギリアム、そしてコメディアンのデヴィッド・ジェイソン(『Danger Mouse』の声 ※注) このページに情報があります。)といった面々だ。

 この アルバムはボンゾ・ドッグ・バンドにお立ち寄りの際、ほんとにいつでも最高の出発点になることうけあい! 最も良く知られている曲は『The Into. & The Outro』。 ラジオで各地のディスク・ジョッキーがこぞって掛けてたしCMにも使われ、ロイ・ロジャーズからアドルフ・ヒトラーまで多数の追加メンバーも含めた「バンド」を紹介するという素晴らしくも狂わしい役目を果たしている。 『Cool Britannia』、『Jollity Farm』、『Mickey's Son & Daughter』のような曲では、バンドはルーツに沿った演奏を聴かせる。 ヴィヴィアン・スタンシャル はエルヴィス(『Death Cab For Cutie』)、トニー・ベネット(『I Left My Heart In San Francisco』)、 非常にリアルなジュリー・アンドリュース(『The Sound Of Music』)といった素晴らしい物真似芸を披露! ニール・イネス は60年代のガールポップ・グループを思わせる逸品『Piggy Bank Love』を聴かせ、 『Music For the Head Ballet』では見事な楽器演奏の腕を見せる。 『サージェント・ペッパー』への回答のようにも思える『Equestrian Statue』で、バンドはかなり攻撃的になる。 彼らのオフビートなユーモアセンスにちょうど合った、愉快なほど率直な『I'm Bored!』、 形成手術に喝采を送る『Look Out There's A Monster Coming』。 そして多分実録ものの『Jazz-Delicious Hot, Disgusting Cold』は愉快な「グループ作品」で、 おニイさん方全員が多彩なタレント…まぁたまにはタレントでない箇所も、発揮してくれる。

 『ゴリラ』 のようなアルバムを出すのは1967年においてまったく通常のことではなかった…。 これが人々にとってショッキングだったことを頭に入れておいて欲しい。 ボンゾズの音楽的興味がここからサイケデリックに拡大していったとしたら、もっと非常に大きなショックになったことだろう!! あぁ…しかしそれはまた別のオサラに譲ることにして…。

細かい情報 :

発売時期 : 1967年10月 タイトル 『Gorilla』 グループ名 The Bonzo Dog Doo/Dah Band (ブックレット付き)

Liberty Records (英国盤) - LBL-83056(モノ) LBS-83056(ステレオ)

Imperial Records (アメリカ盤) - LP-12370/

再発時期 : 1975年 タイトル 『Gorilla』 グループ名 The Bonzo Dog Band (ブックレットなし) (オレンジ色のジャケット)

Sunset Records (英国) - SLS50160

1980年 タイトル 『Gorilla』 グループ名 The Bonzo Dog Band (ブックレットなし) (黒ジャケット)

United Artist Records (英国) - LBR1019

1993年 タイトル 『Gorilla』 グループ名 The Bonzo Dog Band (CD)

One Way (アメリカ、カナダ) S21-17370

1995年 タイトル 『Gorilla』 グループ名 The Bonzo Dog Band (CD)

BGO Records (英国) - CD82

(US)-LP-12370 UA LBR1019

クレジットに名前が登場するバンドメンバー : ヴィヴィアン・スタンシャル、ニール・イネス、ロドニー・スレイター、 ロジャー・ラスキン=スピアー、"レッグス"ラリー・スミス、サム・スプーンズ、ヴァーノン・ダドリー・ボヘイ・ノウェル

クレジットに名前が登場しないミュージシャン : デイブ・クレイグ プロデューサーのジェリー・ブロンに雇われて、ヴァーノンの病欠中、ベースを担当。 デイブの貢献した曲は以下の通り。
Equestrian Statue』、『Look Out There's A Monster Coming』、 『The Intro & The Outro』、『Piggy Bank Love』。 デイブは結局ヴァーノンの後任としてベースを演奏するようになり、『Do Not Adjust Your Set』の一部のエピソードに登場している。

このアルバムに入らなかった曲 : この時期までのボンゾのレパートリーには以下のようなものがあった。『The Tiger Rag』、 『It Was A Lovely Party Until Someone Found A Hammer』、 『When Yuba Played The Rumba On The Tuba Down In Cuba』、 『I'm Glad That I'm Bugs Bunny』、『Crying In The Chapel』、 『Falling In Love Again』、『The Craig Torso Show』、『The Laughing Blues 』等だ。

このアルバムに入らなかったバンドメンバー : ボブ・カー(トランペット)、ジム・チェンバレン(またの名は"ジム・ストロボ")、シドニー・"ビッグ・シド"ニコルス(バンジョー)、 レオン・"レニー"・ウィリアムス(トランペット)、レイモンド・レウィット(チューバ)、ジョン・ペリー(トロンボーン)。

ザ・ビートルズ :「ファブ・フォー」の面々はボンゾの大ファンで、『マジカル・ミステリー・ツアー』で、映画中の唯一ザ・ビートルズ作でない曲、 『Death Cab For Cutie』を演奏させたほどだ。この曲はボンゾのブッ飛び具合を良く示している。
ボンゾズは映画出演者のために開かれたパーティーにも出席し、噂によると、「ファブ・フォー」とボンゾズがステージでジャムを行ったようだ。

ボブ・カー : 彼の恥のカケラもない離脱に怒り狂ったヴィヴィアンとレッグスは、アルバムのジャケットとブックレットでカーにいくつか中傷を浴びせた。 ジャケット裏面に、ボブ・カーの小さな顔写真があるが、下半分は女の股とすり替えられている。 ブックレット中、サム・スプーンズのページで、いろいろな語句を書き連ねているサムの姿が写っている。 この中で非常に目立つ文句が、「私はボードビルたちとは絶対口をきかない!」だ。

シングル曲 : Equestrian Statue』 /『The Intro. & The Outro (Liberty-LBF-15040)

ビッグ・ショット : Big Shot』はアメリカバージョンのオリジナル盤には含まれていなかったが、 再発時に追加された。(理由はまったく分からない。) 探偵もの映画とミッキー・スピレーンの小説群を題材にした、非常に馬鹿げた曲だ。 (第2面の『Mickey's Son & Daughter』の後に追加された。)

偽名 : バンドメンバーのうち2人は芸名を使っており…みんながこれにおぉーきなショックを受けた…。 「サム・スプーンズ」は芸名で、本名はマーティン・アッシュ。 これほど身分を偽ってなかったのは「ヴァーノン・ダドリー・ボヘイ・ノウェル」だった。彼の本名はヴァーノン・ダドリーだ。 「ボヘイ・ノウェル」はヴィヴィアンのアイディアで、いいとこ出みたいに響かせようというわけ! (このねらいは大成功!)

映画への出演 : 1967年、ボンゾズは「パテフィルム」(Pathe Film:館内で流されていたニュース映画)に出演するほどポピュラーだった。 ボンゾズの演奏光景には次のようなものがあった。 ニールがサージェント・ペッパーみたいな格好をしてる『The Equestrian Statue』…。 また『The Head Ballet』もフィルムに収録されているが、これを言葉で描写するのは不可能に近いだろう! (ニュース映画中に捉えられた「奇行」としては、この他にも『Nurdling』、『Instant Paint On Sun Tan』といったものがあり、…あぁ60年代!)

ボンゾ関連のスキャンダル!! : アドルフ・ヒトラーの登場さえもまだ気に障るには物足りないとばかりに…。 ボンゾズは『The Intro. & The Outro』をレコーディングし直すようプレッシャーを掛けられた。 もともとレコーディングされたテイクの演奏者紹介には、イギリスの内閣メンバー、クエンティン・ホッグへの言及 (「さて次は、クエンティン・ホッグがちょうど、ブタのように鼻を鳴らして到着した」)があった。 そこでホッグ氏はしかるべきネジを締め上げたようで、ヴィヴィアン・スタンシャルはスタジオに出向き、 再度録音を行った。 (オリジナル・バージョンが何らかのかたちで存在するかどうかは不明。)

日本語訳/湯田 賢司