ジャケット(カバー)について

このサイトを始めた頃、ニールのアルバムのほとんどが廃盤となっていてCD化されていない状態だった。その後にリコレクション・シリーズがリリースされ、幻といわれた「ザ・ワールド」の唯一のアルバムまでもがCDとなって簡単に入手する事が出来るという嬉しい状況となったわけだ。ボンゾズに関しては全曲が「Cornology」を手に入れれば聴く事が出来るので、今やアナログのヴィニール盤を追い求める必要など無くなったかのようだ。
それでも僕はアナログ盤の方が好きなのである。確かに置き場所はとるし、重いし、何かと保管にも再生にも気を使うのだが、再生音に関しては間違いなくCDは足元にも及ばない実力を持っている。まぁ、この辺について言及するとマニアの戯言と一笑されてしまいそうなので割愛するが…。別にCDの手軽に扱えるという利便性を否定する気は全く無いが、ただひとつだけどうしても好きになれないところがある。それはジャケット(カバー)のアートワークなのである。
プラケースに収められたCDの画一的なブックレット形式は一切の魅力が無い。コンパクトにしようということばかりが優先されて、所有する喜びが全く沸き起こらない物になってしまっている。最近でこそ、「紙ジャケ」と呼ばれるアナログ・カバーを模倣しミニチュア化したCDが発売され人気を博しているが、それだって初めにアナログ・レコード盤のジャケットありきということを忘れてはならない。

LPレコードが「アルバム」と言われるようになった頃、ビートルズ「サージェント・ペッパーズ」に代表されるようにカバー・デザインが表現の一部として活用されるようになった。それまではレコードの“入れ物”だった物がアートのキャンバスとなっていたのだった。絵や写真に意味を持たせるのは勿論のこと、素材である紙の種類や形状、印刷のインクにまでこだわり始めた。さらにはインサートや内袋に工夫を凝らしたり、冊子(ブックレット)などのおまけを付けたりする物も現れた。これらはアーティスト側のアイデンティティを示す手段として使われ、レコードの演奏部分にも匹敵する比重を占められた。
だが、これらのことは必然的に従来の物よりも製造コストがかかるようになり、レコーディングの長時間化に伴いレコード会社の負担は大きくなっていったものと考えられる。もちろんレコード会社とて、全ての所属アーティストに大きな予算を割けるわけが無い。ボンゾズ関連のアルバムに関しては趣向の凝らしたカバーが多く、そういった意味ではレコード会社から期待されていたと見ていいだろう。特にボンゾズの最初の2枚のアルバム「ゴリラ」「ドーナット」はおまけのブックレットまで付けられたのだから…。おもなカバーの特徴は下記に纏めることにする。

  • Tadpoles (タッドポールズ):覗き窓のような穴が開けられ、インサートの移動で絵が変化する。通称ダイカット・スリーブ

  • Keynsham (ケインシャム):イラストの描かれた銀ホイルがゲートフォールド(見開き)ジャケットに貼られている。

  • Let's Make Up (仲良き事は美しき哉):ボンゾドッグのカードがボール紙を裏返して作られたジャケットに貼られている。

  • Lucky Planet - The World:エンボス加工された紙によるゲートフォールド・ジャケット。

  • Grimms (グリムズ):初回盤は赤いアヒルの部分だけがエンボス(立体的)加工されている。

  • Rockin' Duck (ロッキン・ダック):アヒルの被り物の切抜きカバーで覆われている。

また英国盤に多いヴィニール・コーティング・カバーは美観を上げる目的のほか、擦れなどから印刷面を守る要素も持っている。独特の光沢を持っている英国盤は「所有する喜び」を満たしてくれる物で、愛好者は非常に多い。一方、米盤の多くは貼り込みで作られたカバーで、経年変化で印刷紙表面がひび割れ、またコーティングがされていないことから印刷面が摺れてしまった物が多い。どうもアメリカではレコードが聴くための「消耗品」と位置づけされているようにも感じてしまう。または「工業製品」といったところだろうか? もちろん米盤は音の良いものが多いのだが、美しさという観点からは英国盤に負けているように思われる。

物を集める人というのは何でもその“物”の最初の姿のままで保管したくなるものだが、日本盤に付けられる帯というものはどうだろう? 確かに店で売られた状態では付いている物だが、そこにアーティストの意図は無いものと思われる。上の方で述べているようなアーティストのアイデンティティは帯には示されていないだろうと言うことだ。だって日本のレコード会社が後から勝手に付けたものだし、それの有無によって中古市場の値段が違うというのは僕には理解できないことなのだ。しかしながら、コレクター市場、特に海外では日本盤の帯はかなり注目されているようなので、このサイトでも日本盤CDに関しては出来るだけ紹介することにする。
僕としては皆さんが中古盤屋さんなどで「ゴリラ」「ドーナット」はブックレットが付いている物を探すとか、「ケインシャム」の美しい銀紙ジャケットを手に入れるといったことを面白がって欲しいので、ニール関連レコードのオリジナル・アートワークとおまけの品などをお知らせできたらと思う。
(つづく)