1995年

A CD is a wonderful thing, but music only lasts as long as it's played.
Ho hum, life goes on . . .

CD「Re-cycled Vinyl Blues」のブックレットにかかれたイネスの言葉である。僕はこの言葉に彼のアルバム群のCD化が近いことを予感した。なんたって第1弾が「How Sweet To Be An Idiot」のCD化だ、第2弾、3弾だって・・・。
しかしよくよく考えてみると、彼のソロアルバムは皆レーベルが違うのである。「How Sweet 〜」のUAはEMI系列だからして今回のリイシューがEMIから出たのは不思議じゃないけど、「Taking Off」はアリスタ、「Book Of Records」はポリドール、「Off the Record」はMMCなどというマイナーレーベルだ。アリスタやポリドールなら望みもあろうものの、MMCはいかに・・・・。
ところが!ところがである。そのいちばん望みが無いと思われた「Off the Record」のCD化のニュースが入ってきた、しかも日本だけで。さらに「Rutland Weekend Song Book」も同時に発売予定だと!おお〜っ、これはたいへんなことである。とうとう時代はイネスを求めだした、いやそうに違いない。

その頃、僕が入手していたイネスのレコードは「Taking Off」「Book Of Records」そして「Off the Record」
「Taking Off」は地元の中古レコード屋のオープニングセールで。「アップルマテリアル」によるとイネスのソロの中では一番入手が容易であるものらしいがちょっと高かった。「Book Of Records」は東京のレコード屋さんで、その盤はインサートがついていなかったのだが(もちろん、そのときは知る術も無い)その後英国の個人コレクターよりトレードで入手。「Off the Record」も英レコード・コレクター誌のセットセールを通じて入手した。
そういう訳で「Off the Record」はCD化される以前に持っていたのだが、どうして日本独占発売の品を買わない訳にはいかないであろう。あ〜発売日が待ちどおしい。しかしその一方、MSIからリリースされるこれらのCDが発売日当日にレコード屋の店頭に並んでいるかも心配であった。
そんな不安もよそにそれらは歴史的当日、しっかりと売られていた。初めて耳にすることになる「Rutland Weekend Song Book」をすぐさまプレイヤーにセットする。「I Must Be In Love」の初期ヴァージョンも素晴らしい。CD化にあたっての付録ブックレットや装丁など完璧である、本当にMSIは良い仕事をしたと思う。

レコード・コレクター・マガジン

日本版11月号、まさかと思われた「ボンゾ・ドッグ・バンド〜モンティ・パイソン」特集!!! 本誌中にも自ら「無謀ともいえる企画」と書いてあるとおり、それまで特集されたアーティスト達に比べて知名度が格段に低かったはずである。
「ビートルズ&アップル・マテリアル」を更に充実させた記事が載せられ、資料的価値も高められた本号を僕は何度も何度も読み返したものだ。実際、僕の周りにも本特集に魅せられてボンゾズ・ワールドにはまっていった者もいる。この頃には、ボンゾズの各アルバムもCD化されたものがMSIが独自の解説をつけて発売されており、誰でも簡単に聴くことの出来る状況は出来上がっていたのだ。
しかしながら僕のボンゾズのレコードは増えていなかった。「Keynsham」をようやく手に入れたのが、その年のはじめ頃だったか・・・。「レコード・コレクター・マガジン」の特集が効いたのかどうかは分からないが、年末辺りから東京都内の輸入盤屋で「Cornology」のスリップ・ケース付きのセットを見かけるようになる。たしか「アップルマテリアル」でも「レコード・コレクター・マガジン」に於いてもこのボックス・セットは入手困難になっているとのことだったが、さて再発でもしたか?。本当にそれまでは一度も見かけたことがなかったし、例の記事を鵜呑みにし入手は半ばあきらめていた。ともあれ、ようやく全ボンゾズの音源を聴くことが出来るようになったのだ。

アルバム単位で聴くことの出来たそれぞれの曲は、自分の居場所があるようだった。「History of Bonzos」ボンゾズ・ワールドに足を踏み入れた僕にとっても、そのベスト盤は曲順に違和感を感じる物だったし。アルバムごとに全く表情が違う彼らはベスト盤といわれるものではベストではない、アルバム単位がベストである。その事については他のどのミュージシャン、グループにも言われている事だけれども、とかく「マジカル・ミステリー・トゥアーのあのバンド」と語られるボンゾズにとってはなおさらアルバムを聴かないと“わからない”バンドだと感じたのだった。

さて、興奮のうちに1995年も幕を閉じたが、アナログ盤はあまり増えてはいない。しかしCD化されれば入手しやすさも変るだろうし、何しろ気軽に音に触れることが出来るのが良い。そして、きっと今後続くであろうイネスのソロアルバム群のリイシューを心待ちにしていたのである。

A CD is a wonderful thing, but music only lasts as long as it's played.
Ho hum, life goes on . . .

(つづく)